これは小説ではない。
あれだけ、ナチズムの一掃に努力していると思われていたドイツに、実はナチの信奉者がたくさんいるらしい。
確かに、ネオナチのいう言葉はよく聞くし、話題にもなるが、もっと隠れたものだというイメージを持っていた。
だが、どうもそうではないらしい。
ハイディは、ナチズムの信奉者である父母の下に生まれ、ナチズムの思想教育を受けて育ち、ドイツ愛国青年団に入っていた。この団体はヒトラー・ユーゲントの正統な後継団体だという。
そんな団体があることもびっくりするが、ドイツの右傾化という言葉が、日本の右傾化とは全く異なるものであり、そのままナチズムに直結している可能性があるということに恐ろしさを感じた。
日本の右傾化は、アメリカの属国としての日本、そして、リベラルとは全く違う日本の左翼に対する不信、文化の断裂を経験した日本に対する寂しさ、浮ついた、根っこのない現在の文化、まるで接ぎ木のような文化に対する不信感、そういったいろいろな側面を持ったものであると思うが、決して戦前回帰の思想ではないと思う。
ドイツではどうか。当然、反ナチも強いとは思うが、ナチズムがまるで日本のオウムのように、社会の中に堂々と住んでいるとなると、相当問題だろう。
ハイディは、結局、ナチから抜けるわけだが、それは危険を伴う行為であったようだ。これはそんな少女時代を送ったハイディの手記である。
ドイツでもベストセラー。当然、そうだろう。
現在のドイツを知るための必読書かも。
<目次>
ふたりの私―一八歳まで私はナチだった
私の奇妙な家族―英語はダメだ、ドイツ語で言え!
学校で―算数は戦争と同じくらい怖かった
ハンガリー狂騒曲―いつだって本物のナチだったからな
秘密のキャンプで ドイツ愛国青年団―「痛い」だと?とっとと朝練へ行け!
右翼社会の男と女―お前のジャンプブーツは優しさに飢えている
仲間と過ごした日々―「寛容の日」だって?じゃあ、ぶちこわさなくちゃな
私の信条―崇拝していたのはルドルフ・ヘス
ニーダーシュレージエン休暇村―父の造った「ナチスの楽園」
私、間違ってるのかな?―心が揺れたこともある。でも、やり過ごした
いざ、国家民主党へ―ジャンパーを着たおじさんたち
私の大切な人‐フェーリクス―ナチにもこんな男がいた
柩にかけられたハーケンクロイツの旗―私は何度もカメラマンを殴った
終わりの始まり―妊娠そして流産
最後の闘い―離ればなれになって
ネオナチの行き着く先は…―国家社会主義地下組織による犯罪
ついに脱退へ―逃がさねえぞ!
そしていま―愛する家族とともに
0コメント